サバ缶とイワシ缶、栄養価が高いのはどっち? 内臓脂肪抑制にも効果? 管理栄養士に聞いてみた

サバ缶とイワシ缶とでは、どちらの方が栄養価が高いのでしょうか。管理栄養士に聞きました。

image
人気が続くサバの缶詰

 健康維持やダイエットに効果的とメディアでたびたび報じられ、人気が続く「サバ缶」ですが、近年は「イワシ缶」にも注目が集まっているようです。SNS上では、「(サバ缶よりも)イワシ缶の方が優秀な気がする」「サバ缶も良いけど、イワシ缶もおいしい」などの声が上がっています。

 どちらも、記憶力の維持などに効果的な「EPA(エイコサペンタエン酸)」「ドコサヘキサエン酸(DHA)」が多く含まれていると言われていますが、サバ缶とイワシ缶とでは、どちらの方が栄養価が高いのでしょうか。三鷹駅前たなか糖尿病・内科クリニック(東京都三鷹市)の管理栄養士、田中恭子さんに聞きました。 

内臓脂肪が気になるときはイワシ缶

Q.そもそも、サバ缶やイワシ缶には、どのような栄養成分が含まれているのでしょうか。

田中さん「どちらも青魚特有の不飽和脂肪酸(EPA/DHA)を多く含みます。EPAとDHAは、『n-3系(オメガ3)脂肪酸』に分類され、肉類に含まれる飽和脂肪酸とは異なり、体脂肪になりにくい脂肪酸です。EPAとDHAは脂質異常症や高血圧、動脈硬化の予防などに効果的なので、『最近、肉ばかりで魚の摂取量が減っている』『魚の調理は難しいから苦手』という人には、サバ缶やイワシ缶はとてもお勧めです。

また、骨ごと食べられるため、カルシウムの量も多く、骨量が気になる人にとっても、缶詰で食べるメリットは大きいでしょう」

Q.では、サバ缶とイワシ缶の栄養価の違いについて、教えてください。

田中さん「水煮の場合、どちらも100グラム当たり約200キロカロリーですが、サバ缶よりもイワシ缶の方がEPAを多く含んでいます。EPAは内臓脂肪の生成を抑制する作用もあるので、内臓脂肪が気になる場合はサバ缶よりもイワシ缶の方が良いかもしれません。

サバ缶は、EPAもDHAもバランスよく摂取することが可能です。また、イワシ缶よりも高タンパクなので、良質な不飽和脂肪酸を取りながら、しっかりタンパク質を取りたい人にお勧めです」

Q.サバ缶やイワシ缶を食べるときの注意点について教えてください。食べ過ぎると、どのような影響があるのでしょうか。また、調理方法で栄養成分が減る可能性はあるのでしょうか。

田中さん「体脂肪になりにくい不飽和脂肪酸とはいえ、どちらも脂質量が多く、塩分やプリン体が比較的多く含まれています。食べ過ぎれば摂取カロリーが高くなるほか、塩分やプリン体の取り過ぎにもつながりやすいので注意が必要です。食べるのであれば、1日1缶以内にとどめるのが良いでしょう。また、サバやイワシだけでなく、さまざまな食材から栄養を摂取することが大切です。

注意点ですが、調理方法によって不飽和脂肪酸の量が変わってしまいます。高温調理では不飽和脂肪酸が減りやすいため、特に揚げて調理をするのは避けた方が良いでしょう。

みそ煮のような味付きの缶詰の場合、糖質や塩分の過剰摂取につながりやすいため、水煮缶がお勧めです。味付きの缶詰を食べる場合、缶詰以外の食材は無塩にするなど工夫が必要です。例えば、みそ煮のサバ缶1個の食塩相当量は2グラム前後なので、他の食材と組み合わせる際は次の調理をお勧めします。

・みそ煮のサバ缶に添える野菜(ホウレンソウやカブなど)は蒸した後、カツオ節を振る。ドレッシングなどの調味料は使わないこと

・簡単に切っただけのトマトを添える

・米は雑穀米や玄米などを選び、炊き込みの素やふりかけを使わない。代わりに青のりを振ったり、焼きのりを添えたりする

・食後に皮付きリンゴを2切れ(約4分の1カット)食べる。そうすれば塩分を抑えつつ、不足しがちな食物繊維や塩分の排せつを促すカリウムもしっかり摂取できるでしょう」

Q.サバ缶やイワシ缶を食べるのに最適な時間帯はありますか。

田中さん「食べるのであれば、エネルギーとして変換されやすい日中の時間帯(朝食時、昼食時)がお勧めです。先述のように、1缶当たりの脂質量は多いため、カロリーが高い傾向にあります。特に午後9時以降は、脂肪をためこむ時間帯なので、『魚だから大丈夫』と食べ過ぎれば、体重の増加につながりやすいので注意が必要です。

夕食や遅い時間帯に魚を食べたいときは、低脂質、低カロリーで高タンパクな白身魚を選ぶと良いでしょう。今の時期なら、タラチリ鍋やタラのホイル焼き(レンジ蒸し)などに調理して食べるのがお勧めです。もちろん、白身魚や赤身魚の刺し身も低脂質で高タンパクな食べ物です。仕事が終わるのが遅くなった日に、スーパーで刺し身パックを夕飯用に購入するのは、賢い選択といえそうです。

脂質異常症や高血圧、動脈硬化の予防効果が期待できる不飽和脂肪酸が摂取できるサバ缶やイワシ缶を食事に取り入れるのはお勧めです。先述のように、食べ過ぎや遅い時間帯に食べるデメリットを踏まえ、朝食や昼食に1日1缶以内を目安に食べると良いでしょう。

サバ缶やイワシ缶は、魚離れの進む私たちの強い味方となり得る存在です。上手に活用していきましょう」

(オトナンサー編集部)