補正予算、岸田政権で累計80兆円 「安倍政権超え」間近に迫る そして積み上がった借金は1000兆円

政府は10日、経済対策を裏付ける2023年度の一般会計補正予算案を閣議決定し、歳出(支出)総額は13兆1992億円となった。岸田政権として約2年で計4回の補正予算の累計額は80兆8118億円に達し、7年余で計13回編成した安倍政権の91兆7050億円に迫る。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻といった危機が大型編成の理由とはいえ、物価抑制や景気への効果は明確ではなく、借金だけが確実に増える構図となっている。(市川千晴)

image

補正予算は予算の膨張を防ぐため、財政法で「特に緊要となった経費の支出」に本来限定されている。

だが、新型コロナウイルスが流行した20年以降、補正の規模が一気に膨らむ中で、緊急性が乏しい事業も紛れ込む。今回は低所得世帯への給付金で1兆592億円、電気とガス、ガソリンの価格抑制に7948億円が柱の事業として計上される一方、公共事業関係2兆2000億円、宇宙戦略基金3000億円なども入った。

◆「補正予算は確保しやすい上に…」

ある与党議員は「当初予算は査定が厳しいが、補正予算は確保しやすい上に、国会の審議時間も短い」と明かし、補正予算が規模ありきで、ばらまきの手段になっていることを認める。

岸田政権が6月に閣議決定した「骨太の方針」では、予算を「平時に戻す」と明記されたが、今回の補正予算はそれにほど遠い。仮に、次回の編成が今回と同規模になれば、岸田政権の累計額は安倍政権を超す。

◆「予算の効果を検証し、情報公開の仕組みを」

補正の財源は7割近くを国債に依存。国債の発行残高はすでに1000兆円を超え、補正が財政悪化に拍車をかける。経済対策の柱となる所得税(1人3万円)と住民税(1人1万円)の減税は来年6月の実施。今回の補正ではなく、12月の24年度当初予算編成で手当てされるが、借金で穴埋めされる公算が大きい。

第一生命経済研究所の星野卓也氏は、宇宙関連事業などは「緊急性が要件の補正ではなく、当初予算で計画的に財源を確保することが望ましい」と指摘。その上で「政府は補正を含めた予算の効果を検証し、分かりやすい情報公開の仕組みを整えるべきだ」と話した。