手術に欠かせない抗菌薬、30年ぶりに国産化…政府の製造設備への助成で中国依存の脱却図る

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 中国に依存している抗菌薬の原薬製造に、国内の製薬企業が約30年ぶりに乗り出す。手術に欠かせない抗菌薬が、経済安全保障推進法における特定重要物資に位置づけられたことを受けた対応だ。政府は今夏、二つの企業グループに対して製造設備への助成を決めており、2024年までに製造を開始し、30年までに自給体制を整えることを目指す。

経済安保「特定重要物資」

 抗菌薬は、細菌を死滅させたり増殖を抑制したりする医薬品で、抗生物質とも呼ばれる。手術では、臓器などに細菌が感染し増殖して命に関わる恐れがあるため、点滴や注射で用いる抗菌薬が欠かせない。

 抗菌薬の原薬は、特定のカビ菌による発酵で作った原材料を化学合成するなどして作る。国内企業は1990年代まで原薬を製造していたが、薬価の下落を受けて、製造コストを低く抑えられる中国への技術移転を進めた。現在は、ペニシリン系などの抗菌薬で、原材料のほぼ100%を中国から輸入している。

 2019年には中国にある工場の操業停止などで、日本の医療機関が抗菌薬を入手しにくくなり、手術延期など大きな影響がでた。