今世界が注目する宮崎ワイン。都農と五ヶ瀬、2つのワイナリーを巡る旅

フランスやイタリアといった欧米諸国と比べるとまだまだ歴史の浅い日本の国産ワイン。しかしながら、近年温暖化の影響もあり、その品質や豊かな味わいがひそかに世界から注目を集めています。

現在九州では、佐賀県を除く6県でワインが造られています。九州全体の日本ワインの生産量は750ml換算で約77万本。その半分以上の約47万本がなんと宮崎県、しかも県内産ブドウで醸造されています。

ここでは、宮崎を代表する2つのワイナリーを北から南へ巡る旅行プランをご紹介します。おすすめの周辺観光や宿泊先、宮崎産ワインとのマリアージュを楽しめるレストランなど、新たな宮崎の魅力に出会えるかも?

不適地を逆手に。日向灘を望む都農ワイナリー

九州山地の中央、尾鈴山の麓に広がる都農町と川南町。高千穂から車で約1時間半、宮崎空港からなら車で1時間ほどで辿り着く、海を望む丘の上に位置する「都農ワイナリー」。

戦後まもなく、山形県から仕入れたキャンベル・アーリーの苗が都農町で植えられたことからブドウ栽培が始まり、当初は病害虫を防ぐのに苦労したものの、次第に広がり、1996年に新たな品種の栽培を始めたことで都農ワイナリーが設立されました。長年の努力が実って、今では年間20万本以上を生産するワイナリーに成長しました。

日照量は全国でも随一の長さを誇る都農町。年間降雨量4,000㍉以上で、世界のブドウ産地の5~8倍もの雨が降るだけでなく、収穫期には台風が襲来することも。ブドウ栽培やワイン生産には最も不適地と言われる中で、それを逆手に取って、石灰質を含む火山灰土壌が覆う複雑な地質を生かしながら、土作りや草生栽培など独自の技術で挑戦し続けました。

都農ワインは全体的に色が薄くて渋みが淡い、エレガントなライトボディ。筍の天ぷらや大根の煮付けなど、日本の食材の旨味を引き立てるような存在。あるいはチキン南蛮、地鶏のたたき、ポン酢などの宮崎グルメとも相性抜群。「ワインは地酒」という信念のもと、地元産ブドウを100%使用し、地元の風土を表現するワイン、地元の人々に愛されるワイナリーを目指しています。

ワイナリーツアーでは、取締役工場長の赤尾さんにお話を伺いながら、醸造過程の見学。ツアーの最後にはワインの試飲ができます。

毎年イギリスで開催される、インターナショナル・ワイン・チャレンジ2018(IWC:International Wine Challenge)にて銀賞と奨励賞を受賞。初挑戦の世界的規模のコンクールで2アイテム入賞という嬉しい結果に。キャンベル・アーリーを中心に国内外のコンテストで多数受賞、特にトロピカルフルーツのような華やかさを持つシャルドネのワインは、世界的にも非常に高い評価を得ています。

名称:都農ワイナリー
住所:〒889-1201 宮崎県児湯郡都農町大字川北14609-20
TEL:0983-25-5501
WEB:https://tsunowine.com/

TSUNO WINE & BAKERY

昨年9月にはリニューアルオープンを果たし、新たにベーカリー「TSUNO WINE & BAKERY」を併設しました。

ジャズが流れる店内やテラスからは日向灘が一望でき、ケヤキなど地元の木材を使ったカウンターが設置され、おしゃれで温かみのあるデザイン。

「ワインを楽しむパン」をコンセプトに作られる、地元の食材を活かしたパンの数々。

都農ワインを代表する「キャンベルアーリー」であんを炊いた「あんバターサンド」など、都農産の旬の食材が次々と、ここでしか味わえないオリジナルパンに生まれ変わります。

雄大な景色を見ながら、ワインとパンのマリアージュを楽しめます。

名称:TSUNO WINE & BAKERY
営業時間:10:00-16:00
定休日:月・火・水曜
WEB:https://tsunowine.com/topics/cafe

標高600m丘の上に佇む五ヶ瀬ワイナリー

熊本空港から約1時間半、高千穂峡からはわずか30分ほど。九州のほぼ中央に位置し、九州山地に抱かれた美しい夕日の里として知られる五ヶ瀬町。阿蘇五岳・阿蘇外輪山を望む眺望が素晴らしい、標高600mの丘の上に五ヶ瀬ワイナリーはあります。

「地元で育まれた五ヶ瀬町産ブドウを100%使ったワインを作りたい」という願いのもと、2005年にワイナリーが完成。

ブドウ栽培に密接に関わってくるのが、土壌・気候・日照時間・降雨量。宮崎県に所在しながらも気候は冷涼で、冬の時期は雪が積もるほど。厳しくも豊かな自然と向き合いながら、地元栽培農家さんたちが懸命に育てたブドウ100%使用を実現。

この寒暖差の激しい気候と美しい水が、糖度と酸味のバランスが絶妙なブドウを育むのだといいます。収穫したてのブドウから作られるワインはみずみずしさ溢れるフルーティーな仕上がりに。

五ヶ瀬ワイナリー敷地内には、ワインを購入できる「ワイン館」、地元の人が持ち寄った野菜を販売する「夕日の里 物産館」、五ヶ瀬ワインを堪能できるレストラン「雲の上のぶどう」があります。収穫シーズンには工場見学も。

「日本ワインコンクール2018」や「Japan Wine Competition国産コンクール2014」、さらに直近では女性審査員のみによるインターナショナルコンペティション「さくらアワード2023」にて五ヶ瀬ワインが受賞。デラウェアはダブルゴールド賞、キャンベルアーリーはゴールド賞に選ばれました。

名称:五ヶ瀬ワイナリー
住所:〒882-1202 宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町桑野内4847-1
TEL:0982-73-5477
WEB:https://gokase-winery.jp/

雲の上のぶどうで絶景ランチ

併設のレストラン「雲の上のぶどう」では、祖母山から九重連山、正面に阿蘇五岳、遠方には雲仙岳、眼下には茶畑といった阿蘇の雄大な景色を眺めながら、地元食材を使ったサラダやデザートなど、体にも心にもやさしい料理をビュッフェスタイルで楽しめます。

名称:レストラン 雲の上のぶどう
住所:〒882-1202 宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町桑野内4847-1
TEL:0982-73-5470
料金:大人1,540円(中学生以上)/子供880円。
営業時間:11:00-15:00(L.O 14:30)
定休日:水・木曜

進化が止まらない宮崎のワインツーリズム

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生産量、品質、評価、人気において今急上昇中の宮崎ワイン。気候条件にハンデがあり、不適地とされる中でも、生産者や醸造家が試行錯誤を繰り返し、土壌改良や風土に適したブドウ品種の導入に積極的に取り組み、日々挑戦し続けていることが今に繋がっているのだと感じました。

こうして実際にワイナリーに足を運んで直接生産者からお話を伺ってみたり、現地のレストランで宮崎グルメとのマリアージュを楽しむことで、よりいっそうワインに愛着が湧き、宮崎のことをもっと好きになりました。

今回ご紹介した2つのワイナリーに加えて、南西端に位置し県内第2位の人口を擁する都城市や、日本有数の照葉樹林に囲まれた綾町など、宮崎県内には他にもワイナリーがいくつかあります。次回はどのようなコースでワイナリー巡りしようかとひそかな楽しみに。

今後も宮崎ワインの更なる進化に目が離せません!

渡辺 由布子

17歳から読者モデルとして「Vivi」「JJ」「non-no」など多数女性誌に出演。6年にわたってMBSラジオパーソナリティを務める。大学卒業後、化粧品会社勤務を経て、フリーランスに転身し、ヨガインストラクターを務める傍ら、トラベルライターとして世界中を飛び回る。過去渡航した国は40カ国以上。特にタイに精通し、渡航回数は30回以上。ハワイ留学、LA在住経験有り。現在は拠点を湘南に移し、全国各地を巡りながら、東京と行き来してデュアルライフを送る。