山中に墜落の“B29残骸”回収に現役米兵が初同行 日米の絆で戦争を語り継ぐ 宮崎・高千穂町

image

2023年3月30日(木) 11:00

終戦の直後、アメリカ軍の爆撃機B29が救援物資を届ける途中、高千穂町の山に墜落し搭乗員12人が命を落としました。
その歴史を後世に伝えようと長年、機体の残骸の回収作業を続ける男性がいます。今月、山での回収作業に在日アメリカ兵3人が初めて同行。その様子に密着しました。

在日のアメリカ兵3人が初めて同行

工藤寛さん「戦争が終わって、国に帰れる予定だったアメリカの兵士たちが、不幸にしてこの私が好きな山の中で亡くなったのを、語り継いでいきたいなとは思っています。忘れないように」
元宮崎県庁職員の工藤寛さん69歳。

自身の出身地、高千穂町の山に埋もれていた戦争の歴史を、およそ35年にわたってひも解いてきました。
終戦直後の1945年、8月30日。アメリカ軍の爆撃機B29が、最後の任務で捕虜収容所へ救援物資を届ける途中、高千穂町にある標高1644メートルの親父山に墜落。

搭乗していた20代から30代までのアメリカ兵12人の命が失われました。
今月26日、工藤さんは、ともに活動するメンバーらと共に親父山へ。
今回、その登山に在日のアメリカ兵3人が初めて同行しました。

工藤寛さん「去年、山で大きな(B29の)残骸を見つけたので、今日はアメリカ兵に声をかけて山の中まで一緒に降ろそうと」
在日 アメリカ陸軍・ジョシュア・ガイガー少佐「アメリカと日本の関係も詳しくわかることができるし米陸軍の軍人として、このような経験も珍しいから、本当にありがたいと思います。」

険しい山を登り始めておよそ1時間半

工藤寛さん「このパーツ、あった」
工藤さんが去年見つけた大きな残骸が姿を現しました。
「ターボチャージャー」と呼ばれるB29のエンジンの一部です。

在日 アメリカ陸軍・ジョシュア・ガイガー少佐「まず最初に、残されたものを見て、墜落の衝撃がどんなに激しかったものかと感じました。こんな重い部品を、見つけて引き上げて、ここに保存してくれたことは簡単なことではないと思います。地元の皆さんの歴史に対する思いを深く感じました。」
工藤さんは部品を運び出す前に、ガイガー少佐らを墜落現場に案内しました。

工藤寛さん「あの辺残骸です。」「ここがぶつかったとこ、残っていると思います。当時のあれが。」
現場周辺には多くの残骸が。
在日 アメリカ陸軍・ジョシュア・ガイガー少佐「今も戦争のときからの残りもの残っている物品もある」
若くして命を落としたアメリカ兵12人を追悼しました。
在日 アメリカ陸軍・ジョシュア・ガイガー少佐「軍の同盟だけじゃなくてほんとに人間関係、同じ価値観に基づいて、そのような関係があると思います。工藤さんが、毎年、このようなリスペクト見せてくれて、ほんとにありがとうございます。今日、集まってくれてほんとにありがたいと思います。」

工藤寛さん「墜落以降、軍隊関係の方が見られたのはきょうが初めてです本当に感謝しております。これを機に我々もいつも彼らのことを忘れることなく、セレモ二ーを続けていこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。」
そして、重さ70キロ以上の部品を担いで下山します。

工藤さんら地元関係者だけで運び出す予定でしたが、ガイガー少佐らも協力しました。
「ゆっくりゆっくりゆっくり」

工藤寛さん「山にあればいずれ朽ちて話ももちろん誰も知ってる人いなくなるんですけど、麓に置いておけば触りながら語り継いでいくこともできるかなと思ってます。」

1時間以上かけ、無事、下山しました。

在日 アメリカ陸軍・ジョシュア・ガイガー少佐「現役のアメリカ軍人として、自分たちの先輩が命を落としてしまったことに思いを馳せました。こういったことを語りついでいくことが非常に大事ですし、皆さんに大きな感謝を申し上げたい。」

日米で変わらない思い。ともに戦争の歴史を後世に語り継いでいきます。
工藤寛さん「これを一つの題材にして毎年、平和祈念祭を引き継いでいきながら、次の世代にこういうことがあったんだということと、お互い日米の交流の一つの絆になれば、今日はいい日だったと思ってます。」