中国からさらに外国企業の資金が流出、経済回復の足かせに

Milton Ezrati | Contributor

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すでに窮地に陥っている中国経済が、また新たな問題に直面している。外国企業が近代化と拡大の計画を見直し、利益を自国やアジアの他国、さらに遠くの国へ送り始めている。ここには随分前に中国に進出した企業も含まれる。こうした傾向の要因は直接的なもの、より根本的なものなどさまざまだが、しばらく前から進行していた。だが、要因がどのようなものであれ、こうした傾向により中国経済の回復は一層難しいものとなっている。
外国企業の資金の流出はここ1年以上にわたって加速している。中国国家統計局の入手可能な直近のデータによると、9月までの1年半の間に外国企業は計1600億ドル(約24兆円)もの利益を中国外に送った。夏の四半期だけ見ても資金の流出が流入を上回った。これは長い間見られなかった事態であり、額にして118億ドル(約1兆7640億円)が流出した。こうした巨額の資金流出が、今年に入ってからこれまでに人民元が米ドルに対し約5%安くなった要因であることはほぼ間違いない。
確かに、この動きの一部は一時的な要因を反映している。個人消費と設備投資を促進するために中国人民銀行(PBOC)が金利を引き下げた一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)はインフレ対策の一環として金利を引き上げた。英中央銀行やカナダ中央銀行、オーストラリア準備銀行(中央銀行)も金利を引き上げている。経営者らは当然、内部留保をより永続的なものに回す前に内部留保から最大の利益を得ようと、最も金利が高い国に資金を送った。
これだけであれば、最近の資金流出は金融情勢が変われば元に戻る、必然的にそうなると簡単に片づけられるだろう。だが、もっと根本的で持続的な影響も資金の流れを変えている。中国の景気の減速はその方程式に組み込まれている。

中国統計局によると、中国の成長にとって依然として重要な輸出は減少し、産業活動も鈍化。最近では全面的な後退も示唆している。中国恒大集団(エバーグランデ)や碧桂園(カントリーガーデン)といった不動産開発企業の経営危機により、長年にわたって経済成長を支えてきた住宅建設の効果もなくなった。

また、経済をまずますの成長軌道に戻すために中国政府が最近取った措置が望ましい結果につながらなかったことも、外国企業の経営者らを落胆させている。景気が全面的に後退するという話はまだほとんど聞かれないが、それにもかかわらず、現状では経営者らは中国での事業で得たものであっても利益を他国へ送らざるを得なくなっている。
中国で事業を展開する外国企業にとってさらに厄介なのは、中国と西側諸国との貿易・外交関係がますます緊張していることだろう。米政府は中国への特定の技術の販売を禁止し、中国のテック系ベンチャーに投資することも禁じている。対抗措置として中国は、西側諸国や日本への不可欠な原料の輸出を禁止している。このような友好的ではない政策は、たとえあからさまな衝突には程遠いとしても、不確実性とリスクを高め、ビジネスを行う場所としての中国の魅力を減少させている。
外国企業が抱える懸念に拍車をかけているのが、台湾に対してますます好戦的になっている中国の姿勢と、中国で事業を行う外国企業に対する監視の強化だ。ここ数カ月だけでも、中国当局は米コンサル会社ベイン・アンド・カンパニーと、米信用調査会社ミンツ・グループの事務所を家宅捜索した。ミンツの従業員数人を拘束し、罰金も科した。中国で、そして中国との貿易で起きている他のすべてのことに加え、これらの暗に示された脅威は、欧米や日本の企業にとって今のうちに撤退を検討する大きな理由となっている。このような状況では間違いなく、中国での事業拡大はためらわれる。
外国企業の資金の流出は、かつて目覚ましかった成長を呼び戻そうとする習近平国家主席の取り組みに立ちはだかるハードルをさらに引き上げている。仮に成長路線に戻すことに成功するとしても、資金の流出以外にもさまざまな要因が中国経済を圧迫しており、実現するにはかなりの時間を要するだろう。

forbes.com 原文