介護費用の「平均額580万円」は目安にしかならない 「いくら必要か」ではなく「いくらまでならかけられるか」を重視すべき

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 値上げラッシュに先の見えない年金制度、ささやかれる増税計画と、あらゆる角度からあおられ続ける老後のお金の不安──。そんな老後資金のうち、残しておくべき「必要最低限のお金」として重視すべきなのが「介護費用」だ。

 一般的に、介護費用は一人あたり平均総額580万円かかるといわれているが、介護費用の平均額は人によって大きく異なる。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは言う。

「生命保険文化センターのデータでは、月々の介護費用が8万3000円で、住宅改修や介護ベッドなどの一時的費用が74万円。これを介護期間の平均である5年間続けると合計580万円になるという計算です。

 しかし、介護費用は“どこで介護されるか”で大きく異なる。介護期間は同じ5~6年程度でも、在宅介護の平均費用が358万円なのに対し、施設介護は平均853万円です。さらに、特養などの公的な介護施設なら平均773万円ですが、民間の介護つき有料老人ホームなら1000万円以上にもなります」

 あらゆるものが値上がりしているいま、介護施設も例外ではない。昨年に比べ管理費は7570円、食費は4810円アップしており、平均額はあくまでも目安にしかならない。

「在宅介護のつもりでいても、後からやっぱり施設に入りたいと感じたり、公的介護施設に入ろうと算段していても空きが出ず叶わないこともあります。介護に関してはいくら必要なのかではなくいくらまでならかけられるのかを重視して、元気なうちから情報収集をしておいてください。

 一般的に男性は70~75才、女性は75~80才から要介護状態が増えてきます。まだまだ元気だと思っていても、介護は突然やってくるものです」(黒田さん)


リフォーム、介護、葬儀…老後の「必要経費」どれくらいかかる?

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リフォームにお金をかけて施設入居費用がなくなる本末転倒

 施設の情報収集や入居前のシミュレーションが欠かせない一方で、在宅介護に備えた自宅のリフォームに大金をかけるのは賢明ではない。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが解説する。

「いくらリフォームにお金をかけても、健康状態が悪化して自宅が“終の棲家”ではなくなる可能性は充分に考えられます。リフォームにお金をかけすぎて、施設の入居費用がなくなっては本末転倒です」

 自宅のリフォームは、介護保険が適用される「最低限」の範囲内で充分。例えば、廊下や玄関、トイレ、浴室の手すりの取りつけなら、1本5000~1万円で済む(工事費用は別途)。

「段差解消のためのスロープの設置は5万~7万円、開き戸を引き戸にする工事は7万~10万円もかかります。介護ベッドなどもわざわざ購入する必要はありません。介護保険でレンタルできる上、レンタルの方が最新式を使うことができます」(黒田さん)

老後にかかる医療費は意外と少ない(65才以上の夫婦のみの世帯の生活費の内訳)

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老後資金で「早めにお墓を買う」落とし穴

 介護やリフォームにかかるお金は早めに検討した上で老後資金から確保しておくべき一方で、お墓にかかるお金については、老後資金から捻出してはいけない。相続・終活コンサルタントで行政書士の明石久美さんはこう語る。

「早いうちにお墓を買っても、毎年管理料がかかるケースもあり、お墓そのものも経年劣化していきます。

 また“見晴らしのいいところで眠りたい”と高台や海のそばにお墓を買う人もいますが、供養するのは残された家族です。お墓参りに行きづらい場所に買っても、誰も来てくれなくて持て余してしまう場合も少なくありません。お墓は自分たちが亡くなってから、家族に買ってもらうのがいちばんです」

※女性セブン2023年11月30日・12月7日号