前立腺肥大症、体への負担少ない手術登場 高齢、持病があっても可能

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水蒸気を使った前立腺肥大症の手術

前立腺肥大症は、男性に起きる病気。加齢とともに進行し、患者は60代の6%、70代の12%にいるとする報告もある。

前立腺は男性にだけにある臓器で、膀胱(ぼうこう)の下で尿道を取り囲んでいる。その前立腺が大きくなって尿道を圧迫し、尿が出にくくなったり、頻尿になったりする排尿障害を起こすのが前立腺肥大症だ。

  • 「またか…」 昼夜問わず襲われる尿意 仕事中はおむつでしのぐ
  •  原因はホルモンバランスの崩れなどが指摘されているが、はっきりとはわかっていない。

     診察では、尿の勢いや排尿後に膀胱に残る尿の量、前立腺の大きさなどを測る。1カ月のうちに、尿が残っている感じや、排尿後2時間以内に再びしなければならなかったことなどが起こる頻度についてそれぞれ0~5点で点数化し、合計で重症度を調べる。

     治療は、食事や運動などの行動療法のほか、尿道を広げる薬や前立腺を小さくする薬を使う。患者の半数ほどが過活動膀胱にもなっているとされ、その場合は膀胱をゆるませて尿をためられるようにする薬や膀胱の収縮を抑える薬も使われる。

     薬で改善しないときには手術が検討される。電気メスやレーザーで前立腺を削ったり、くりぬいたりするこれまでの手術に加え、昨年、医療用の糸などで前立腺を縛り上げて尿道を広げる手術と、水蒸気の熱で前立腺の一部を壊死(えし)させる二つの手術が公的医療保険の適用となった。

     いずれも内視鏡を使った手術で時間は10~15分ほどで済む。出血も少ないため、体への負担が小さい。脳梗塞(こうそく)などの持病がある人や、高齢で従来の手術をするにはリスクの高かった患者が対象となる。

     日大板橋病院泌尿器科の大日方大亮(おびなただいすけ)医師は「これまでは薬で様子をみるしかなかった人たちにも治療の選択肢が広がった」と話す。

     頻尿がひどくなると、外出先にトイレはあるか、漏らしてしまわないかと心配し、外出を控えて体力が落ちる恐れもある。

     同病院長の高橋悟(たかはしさとる)教授(泌尿器科)は「排尿のトラブルによって生活に支障がある場合は、年のせいとあきらめず、泌尿器科を受診してほしい」と語る。