快適な睡眠は「ふくらはぎ」が決める…!「夜間の頻尿(夜のトイレ)」が起きる理由と改善方法

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今夏の酷暑も厳しい。

日中は汗が止まるところを知らず体力を大きく削られるため、誰しも次の日に備えて夜の快適な睡眠でしっかり回復したいところだろう。

しかしどうしても水分の取りすぎや、汗による脱水などの「夏ならではの事情」によって、夜苦しむことになる症状がある。その1つが「夜間頻尿(夜のトイレが多くなること)」だ。起きる原因と、取れる対策を紹介するため、過去の特集から抜粋して再掲する。

膀胱を安定させる

「夜間頻尿」を防ぎ、朝まで目覚めることのない快適な睡眠を取り戻すためにはどうすればいいのか。横浜市立大学医学部客員教授で、泌尿器科医の関口由紀氏が解説する。

「年を取ると筋力が衰え、下半身から上半身への血流が滞ります。すると、ふくらはぎなど下半身に余分な水分が溜まってしまうのです。これは本来であれば腎臓へと流れ、尿となるはずなのですが体内に溜まったままになります」

こうして溜まった水分は、日中は下半身にとどまり続ける。しかし、いざ寝ようと思い横になると、下半身から腎臓へと送られていく。

「腎臓に送られた水分は、寝ている間に尿へと作り替えられます。これが膀胱に溜まり、尿意を催すことで夜中に何度もトイレに起きることにつながるのです」(関口氏)

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つまり、夜間頻尿を改善するためには、日中に下半身に溜まった水分を寝る前までに排出することが必要になる。関口氏は、下半身に溜まった水分を出すために、1.タオルはさみ体操をすすめている。

やり方は、椅子に座り丸めたタオルを太ももでギュッとはさんで緩める動作を10~30回繰り返すだけだ。

溜まっていなくても尿意を覚えてしまう「過活動膀胱」

「太ももの内側にある内転筋など、大きな筋肉を鍛えると下半身の血行が良くなります。そのため余分な水分が溜まりにくくなり、夜にトイレに起きる回数を減らしてくれます」(関口氏)

この体操は夕方から夕食後にかけて行うと、就寝前に水分が腎臓へと届けられ、余計な水分を尿として出し切ることができる。

寝ている間だけでなく、日中からトイレが近いという人は加齢により膀胱が収縮し、尿が溜まっていなくても尿意を覚えてしまう「過活動膀胱」を患っている可能性が高い。

これを改善するために役立つと考えられているのが2.骨盤底筋トレーニングだ。関口氏が続ける。

「仰向けに横になり、両足を肩幅程度に開いて軽く両膝を立てます。このままゆっくり息を吐きながらお尻を上げ、尿道・膣と肛門を5秒ほどキュッと締めるだけです。

この動作を一日に10回3セットほど行うことで、膀胱を支える骨盤底筋が鍛えられ、膀胱が安定します。また、尿道括約筋という筋肉にも効果があり、膀胱が縮まるのを防ぐのです。その結果、夜のトイレに目覚める回数も減っていきます」

最近では骨盤底筋を鍛える器具も多く販売されている。主に「膣トレ」など女性の下半身を鍛える文脈で紹介されることが多いが、男女を問わず、排尿機能の改善に効果的だ。このような道具を試してみるのもいい。

「夕食の味噌汁」が難点?

膀胱の周りを通る血管の血流を良くすることも、夜中トイレに起きる回数を減らすことにつながる。神奈川歯科大学客員教授で泌尿器科医の奥井伸雄氏が語る。

「へそから指3本分ほど下にある丹田という部分を、小型の湯たんぽやカイロで温めることで、膀胱の周りの血流が良くなります。こうすると膀胱の柔軟性が取り戻され、尿を溜める能力が高まるのです」

食事に関しても気を付けたいポイントがある。それは、塩分を摂取するタイミングだ。

「夕食に塩分の高いものを食べると、塩辛さを和らげるため、一緒に水分を多くとると思います。身体にとっては余計な水分を取り込むことになり、それが下半身に溜め込まれることでも夜間頻尿が引き起こされるのです」(関口氏)

汁に含まれる塩分が高いため、そばやうどん、味噌汁といった汁物も夜に食べるのは控えるほうがいいだろう。

これらを継続することで、快適な睡眠を手に入れることができる。奥井氏が語る。

「私が診療した中では、75歳の女性が下半身の運動と食事の改善に3ヵ月間取り組んだことで、夜中トイレに起きる回数を6回から1回に減らしたという例があります。夜間頻尿は決して治らないものではありません」

後編記事『快適な睡眠は「ふくらはぎ」が決める…!激痛が怖い「こむらがえり」を「テレビを見ながら予防できる」体操法』につづく。

『週刊現代』2022年3月12・19日号より

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