卵は1日3個食べてもOK…?最新科学で分かった、血管を「再生」させる食べ物

『週刊現代』の記事「【イラストで解説】高血圧・心臓病・糖尿病に悩む人必読!血管寿命を延ばす「らくらくストレッチ」」では、こり固まった血管をほぐすための運動などについて解説した。次は「食」で血管寿命を延ばす方法を、最新科学と専門家の意見を交えてお伝えしよう。

血管寿命を伸ばす「究極のレシピ」

体は日々、口にする食べ物でできている。強く長持ちする血管をつくるためにも、運動だけでなく食生活が重要なのは言うまでもない。ここからは、血管寿命を少しでも伸ばすための「究極のレシピ」を探究しよう。

ひと昔前まで、血管をしなやかに保つには動物性の食材を控え、とにかく野菜を食べるべし―というのが当たり前だった。だが昨今では、そんな常識もすっかり塗り替えられている。前出の加藤氏が言う。

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「もっとも大きく変わったのは『コレステロールが多いので控えたほうがいい』とされてきた卵の扱いでしょう。’15年には、日本の厚生労働省とアメリカのFDA(食品医薬品局)の食事摂取基準で、卵の摂取量の上限がなくなりました。体内のコレステロールの増加と卵の摂取量には、関係がないとわかったためです。

むしろ、血管の材料はタンパク質であり、さらにそのタンパク質はアミノ酸からできていますから、すべての食材のなかでアミノ酸をもっとも豊富に含んでいる卵は『完全食』と言っていい。血管を健康に保つには、卵をはじめとした動物性タンパク質が欠かせません」

人体をつくるタンパク質のもとになるアミノ酸は全部で20種類あり、それらをすべて含んでいる食材には、卵のほかにも肉類、マグロ、アジ、大豆、牛乳などがある。その中でも、含有量だけでなく、バランス、値段、入手のしやすさ、調理の簡単さなどを考え合わせれば、卵が総合的にみていちばん優れているのだ。

動物性タンパク質の力

「さらに、卵黄に多く含まれる脂質の一種・レシチンは、血管の中にこびりつくLDL(悪玉)コレステロールを分解してくれます。これは肉類にはない特長といえるでしょう。

動物性の食材に含まれるアミノ酸は、生よりも加熱したときのほうが吸収されやすいのですが、固まりすぎても吸収率が落ちますから、卵を食べるときは半熟に調理するのがおすすめです。個数でいえば、1日3個食べても問題ありません」(加藤氏)

ただ、仮に1日に必要とされるタンパク質60gをすべて卵で摂ろうとすると、10個も食べなくてはならず非現実的だ。そこで目を向けるべき食材がふたつある。

まずは、卵に次いで効率よくアミノ酸を摂ることができる豚肉である。特に、さっぱりした豚モモ肉は牛肉、鶏肉とくらべてタンパク質が豊富で、それでいて脂質とカロリーが少ない。加えて、糖の吸収を助けるビタミンB1を牛肉の10倍も含んでいるから、血糖値を抑えて血管を守るはたらきも兼ねそなえている。

もうひとつ活用するべきは大豆、とりわけ納豆だ。東京医科大学名誉教授の高沢謙二氏が語る。

「よく知られているとおり、納豆にはタンパク質だけでなく、血栓ができにくくするはたらきのある酵素・ナットウキナーゼ、高血圧を防ぐカリウムなど血管によい成分が数多く含まれています。おすすめは、低カロリーかつ、血管の細胞壁を守る作用があるアルギン酸を多く含むひじきと混ぜて食べることです」

いっぽうで、肉などからは摂ることができないが、血管を強くするために欠かせない物質もある。たとえば、ウリ科の植物に多く含まれるシトルリンというアミノ酸だ。

「赤」がいい理由

ここまで登場した食材を駆使すれば、硬くなった血管をよみがえらせる「究極の一食」は、思いのほか手軽にできる。上掲したのは、その一例だ。

食材の選びかたや調理法だけでなく、味付けにもコツがある。味噌、とりわけ赤味噌を活用することである。

「近年の研究で、ふつうの味噌や白味噌と比べて、赤味噌にはメラノイジンという色素がはるかに多く含まれていることがわかっています。この物質は血管の健康を保つのに役立つほか、糖尿病を予防する効果も高い。愛知県は全国でも糖尿病や脳梗塞の発症率が低いことで知られていますが、赤味噌を日常的に摂っているためではないか、という見方もあるほどです」(前出・加藤氏)

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仕上げに、飲み物にも目を配ろう。冬場には体を温めてくれるしょうがゆず茶がおすすめだ。ゆずをはじめ、柑橘類の皮には毛細血管を強くするビタミンPが多く含まれている。さらにしょうがには血管を広げ、血圧を下げる効果を期待できる。ビン入りのものが手に入りやすいから、食卓に常備しておきたい。

たった1分でも、毎日ストレッチや体操を続けることがモノを言うのと同様に、日々の一食一食の積み重ねが強い血管をつくってくれる。科学的根拠をしっかり知れば、理想的な食生活がおのずと見えてくるはずだ。


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「週刊現代」2023年10月21・28日合併号より