習近平、打つ手なし…!不動産最大手デフォルトで中国経済は総崩れ、地方から「社会保障制度」崩壊のカウントダウンが始まった

デフォルト判定が加速する

10月26日、世界の主要金融機関で構成するクレジットデリバティブ決定委員会=CDDCは、中国の不動産デベロッパー最大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)のドル建て社債をデフォルトと判定した。

“クロス・デフォルト条項”により、カントリー・ガーデンのドル建て社債のすべてがデフォルトする恐れは高まった。

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中国恒大集団(エバーグランデ)、融創中国(サナック)などでも元利金支払いの遅延が発生し、外貨建ての債務などがデフォルト認定される可能性も高まっている。

どこかのタイミングで中国政府は大手の国有銀行、不動産デベロッパーなどに公的資金を注入し、不良債権の処理を進めなければならなくなるだろうが、まだ政府はその必要性に言及していない。

当面、中国で不動産デベロッパー、地方政府傘下の企業である“地方融資平台”などの債務不履行は増加しそうだ。

不良債権残高は増加し、中国経済全体に対する負の影響も強まるだろう。その一つとして、既存の社会保障制度を維持することが難しくなる地方政府の増加が懸念される。

不動産市況は下げ止まらない

カントリー・ガーデンのドル建て社債のデフォルトをきっかけに、中国不動産関連の債務不履行の増加ペースは強まるとの懸念は増えた。

一部では、中国の不動産会社が発行したドル建て社債1750億ドル(1ドル=150円換算で約26兆円)のうち、1245億ドル(約19兆円)がデフォルトしたとの見方もある。

それはカントリー・ガーデンのドル建て社債のすべてがデフォルトしたとの判断に基づく。クロス・デフォルト条項の影響は大きい。

10月から6か月程度の間で、中国不動産業界では605億ドル(約9兆円)の債務が償還期限を迎えるとの推計もある。

うち、30%程度が外貨建て(オフショア)の債務のようだ。最大手のカントリー・ガーデンの米ドル建て社債のすべてが事実上デフォルト相当の状態にあることを踏まえると、外貨建て債務の不履行懸念は高まりこそすれ、低下することは想定しづらい。

不動産市況が下げ止まらないこともデフォルト増加懸念を高める。9月29日~10月6日、“国慶節”の連休中、面積ベースでみた新築住宅の成約は前年比17%減少した。

根本的な解決策はない

2019年の実績と比較しても少ない。中国人民銀行(中央銀行)は追加の金融緩和を実施した。

習政権は大手銀行に不動産向けの融資を増やすよう指示し、住宅関連の規制も緩和するなどした。それにもかかわらず、不動産市況は悪化基調だ。

経済政策に関しても抜本的な対策が打ち出されるとは考えづらい。

10月末、劉鶴前副首相が担った経済政策の責任者としての役割を、何立峰副首相が担うことが明らかになった。

何副首相は不動産バブル崩壊にどう対応するか明確な指針をまだ示していない。

改革開放路線を重視した李克強前首相が亡くなったことは、今後の改革機運を後退させただろう。

バブル崩壊後の日本でも起こらなかったこと

大型のバブルが崩壊すると、政府は銀行や債務問題が深刻な企業に公的資金を注入する。その上で、不良債権処理を進める。

日米などでバブルが崩壊すると、こうした対応が必要になった。いずれ、中国もそうなる可能性は高い。

問題は、習政権が、理論的に必要と考えられる政策をどのように進めようとしているか、今一つ見えてこないことだ。

不動産バブル崩壊への対応の遅れから先行きの経済環境の悪化懸念は高まり、リスクを避ける個人や企業は増えた。

外貨建てだけでなく、人民元建てで発行された不動産関連企業の債務(債券、ローン、高利回りの理財商品など)のデフォルトリスクも高まるだろう。

債務返済を急ぐ個人や企業は今後も増え、経済のデフレ圧力は高まるだろう。そうした中国経済の環境悪化は一般的に“日本化”と呼ばれる。

今後、中国は1990年初頭にバブルが崩壊して以降のわが国が経験しなかった環境の変化にも直面する可能性がある。

社会保障制度が崩壊する

そのひとつは社会保障制度の悪化だ。

中国は農村と都市で戸籍が異なる。社会保障制度は戸籍に紐づく。

企業が集積し、相対的に高い経済成長を維持できる可能性の高い都市部と異なり、不動産バブル崩壊により地方の経済環境の厳しさは増すだろう。

雇用、所得環境の悪化にとどまらず、財政悪化に直面する地方政府は増えた。それに伴い、医療、年金など社会保障体制の不安定化懸念も高まる。

対応策として、いくつかの地方政府を一つにまとめ社会保障制度を運営することなどが考えられるが、既存のベネフィットが少なくなることへの反発を考えると実行は容易ではない。

都市と農村部での戸籍を一つにすることも難しいようだ。最終的に、中国不動産バブル崩壊は社会保障制度の脆弱性を高め、習政権に対する不平・不満増大につながる恐れもある。