「年金6万円じゃ、とても…」老後資金がないことに気づいた62歳・自営業の悲鳴「一生、働くしかないのか」

老後の生活を支える「公的年金」。会社員や公務員の場合、「年金だけで暮らしていける」という水準の人も多くいますが、自営業の場合は厳しいようです。自営業者の老後資金問題、みていきましょう。

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62歳の自営業…平均2,000万円の貯蓄があるとされているが

総務省『家計調査 貯蓄・負債編』(2022年)によると、勤労世帯(世帯主年齢:平均50.2歳)の平均貯蓄額は1,508万円。一方、負債は576万円で、貯蓄現在高から負債現在高を引いた純貯蓄額は平均629万円でした。世帯主が会社や官公庁等にに勤めている(社長、取締役、理事など会社団体の役員を除く)勤労世帯では、600万円強の“余裕”があるといえます。

さらに細かくみていくと、民間企業に勤めている会社員世帯(平均49.8歳)では、貯蓄は1,773万円、負債は975万円で、純貯蓄額は824万円。一方、公務員(平均47.8歳)では、貯蓄は1,728万円、負債は1,035万円で、純貯蓄額は693万円。安定がなんといっても魅力の公務員ですが、貯蓄額の平均値では会社員を下回ります。

さらに自営業(平均62.4歳)ではどうでしょう。平均貯蓄額は2,099万円、負債は625万円、純貯蓄額は1,474万円。さらに詳しくみていくと、腕一本で独立というイメージが強い「商人・職人」(平均61.7歳)では、貯蓄は1,999万円、負債は675万円、純貯蓄額は2,377万円。「個人経営者」*(平均60.6歳)では、貯蓄は3,041万円、負債は664万円、純貯蓄額は664万円です。

*事業主一人のみで事業を行う場合に限らず、家族や従業員などと複数で事業を行っていても、それが法人でなければ個人事業主とされる

会社員を辞めて独立……その理由はさまざまですが「もっと稼ぎたい!」という思いから自身でビジネスを行う人も多いでしょう。その思いのとおり、自営業は会社員や公務員よりも“余裕”があるといえるでしょう。

ただこれはあくまでも平均値。“すごく儲けている”人、“全然儲からない……むしろ赤字”という人も含みます。「独立すれば稼げる」と、甘い話ではないでしょう。

また自営業の場合、会社員以上に老後が不安。その理由は、公的年金によるサポートが足りないこと。

会社員であれば国民年金(老齢基礎年金)に加えて、厚生年金((老齢厚生年金)がプラスされ、その平均受取額は月14万円ほど。65歳以上に限ると月17万円ほどになります。一方、自営業であれば国民年金のみ。2023年4月(同年6月支払い分)から満額支給で月6万6,250円、これが自営業の老後を支える一部となります。

――月6万円じゃあ、とても……

思わず、肩を落してしまうような年金額。さらに自営業の平均的な貯蓄があれば話は別ですが、60歳を過ぎても老後の資金が不十分な状態であれば、「一生働かないと生きていけない」ことが濃厚になります。「こんなはずではなかった!」と悲鳴をあげたところで、後の祭りです。
老後の生活を支える「公的年金」。会社員や公務員の場合、「年金だけで暮らしていける」という水準の人も多くいますが、自営業の場合は厳しいようです。自営業者の老後資金問題、みていきましょう。

自営業の老後準備…「年金を増やす」2つの方法

年金というサポートでみれば、少々、老後が不安になってくる自営業。会社員以上に、計画的に老後を見据えた資産形成が重要といえるでしょう。貯蓄や投資のほかに検討したいのが「年金をいかに増やすか」ということ。

日本の公的年金は、よく3階建ての家に例えられます。1階部分が国民年金。日本人の全員が将来を見据えて備える部分です。そして2階部分が厚生年金。会社員や公務員が対象で、国民年金に上乗せされる部分。そして3階部分は、会社員であれば企業年金など、老後のさらなる安心のために、任意で加入するものになります。自営業の場合、2階以上はすべて任意になるわけですが、そのひとつが「国民年金基金」です。

任意加入の私的年金保険である「国民年金基金」は、国民年金の第1被保険者、60~65歳未満、または海外に居住する人で国民年金に任意加入している人が加入できます。

一定の掛け金で年金額が確定し、その掛け金は月6万8,000円、年間81万6,000円が上限。全額が所得控除の対象だから、節税しながら老後対策ができるといえるでしょう。プラン設計も自由で、1口目は終身年金A型またはB型から、2口目以降は7種類から自由に組み合わせることができます。

たとえば45歳男性。1口目A型、2口目はⅠ型を選び、課税所得は500万円だったとします。月の掛け金は1万6,965円で、65歳からの年金は月1万5,600円、80歳からは1万0400円の上乗せとなります。

もうひとつ、年金を増やす方法として考えられるのが「付加年金」。これは国民年金保険料に月400円を上乗せしたもので、「200円×納付月数」が年金に加算される制度です。国民年金と同様、最長で40年加入でき、毎月の保険料が少ないうえに、年金を2年受給すれば元を取ることもできます。

たとえば45歳から60歳までの15年間、付加年金に加入すれば、月3,000円が加算されることになります。また年金の繰り下げ受給で65歳以降に年金の受け取りを開始すると、その分、付加年金も同様に増額となるメリットも見逃せません。

自営業は公的年金で会社員並みの保証を得ることは難しいものの、ほんのわずかかもしれませんが、年金の基本部分に上乗せさせることはできます。ほかにも「小規模企業共済」や「個人型確定拠出年金(iDeCo)」など、さまざまな制度も。これらは加入が早いほど受給額も多くなるので、若いうちに加入するのがおすすめです。