「韓国は盗品すら返さない国という風評を危惧する声も」……対馬から盗まれた仏像、韓国の反応とその顛末

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盗難仏像の返還が外交問題に発展した…… KBS News-YouTube

<対馬から韓国に持ち込まれた仏像の所有権を巡る裁判、文在寅政権下の一審は韓国寺院の主張を認める判決を下したが、尹政権下の二審は、所有権は日本の寺院にあるという判決を下した。裁判は日本対韓国ではなく、韓国政府対韓国仏教で、最高裁で争われる……>

長崎県対馬市の観音寺から盗み出され、韓国に持ち込まれた仏像の所有権を巡る裁判で、韓国の大田高裁は2023年2月1日、所有権を主張する浮石寺(忠清南道瑞山市)の訴えを棄却した。

浮石寺は同10日、判決を不服として最高裁に上告した。

2012年10月、韓国人窃盗団が仏像を韓国に持ち込んだ

仏像は高さ50.5センチ、重さ38.6キロの観音坐像で、2012年10月、韓国人窃盗団が韓国に持ち込んだ。文化財の価値に比べて管理が緩いという情報を得た窃盗団は対馬に遠征。海神神社から「銅造如来立像」(国指定重要文化財)、観音寺から「観世音菩薩坐像」(長崎県指定有形文化財)、多久頭神社から「大蔵経」(長崎県指定有形文化財)を盗み出した。

盗難文化財は通常、税関等が押収して返還されるが、釜山税関が複製品だとした窃盗団の虚偽申告を鵜呑みにしたとみられている。

盗難被害の届け出を受けた日本の警察は、同年12月、インターポールを通じて韓国に協力を要請。韓国警察は前科56犯、当時68歳の男性ら4人の韓国人窃盗団を検挙し、仏像2体を押収したが、大蔵経は行方がわからなくなっていた。

盗難仏像の返還が外交問題に発展した

盗難仏像の返還が外交問題に発展。韓国検察は15年7月、韓国内で所有権を主張する寺院等がない海神神社の「銅造如来立像」を返還したが、浮石寺が所有権を主張した「観世音菩薩坐像」は返還が見送られ、大田市の国立文化財研究所に保管されている。

観世音菩薩坐像の像内遺物から1330年頃、瑞州の浮石寺に奉納されたと読み取れる文が見つかっており、浮石寺は倭寇に略奪されたと主張する。韓国検察は略奪を立証する資料はなく、また700年前の浮石寺と現在の浮石寺が同一かどうか立証できないと反論した。

日本や米国に現存する高麗時代の仏像や仏画のなかには、倭寇が略奪したものや秀吉軍が持ち帰ったものもあると見られるが、李氏朝鮮の仏教弾圧を避けるため流出したものも少なくない。観世音菩薩坐像が観音寺の所蔵となった経緯を示す資料はないが、観音寺の田中節孝前住職は、李氏朝鮮時代の仏教弾圧から守るため対馬に持ち込まれたと語っている。

2017年地裁は、「仏像を韓国に引き渡す義務がある」

浮石寺が「観世音菩薩坐像」の引き渡しを求めた訴訟で大田地裁は2017年1月、原告の訴えを認める判決を下した。「盗難・略奪によって対馬に移されたと推定される」「高麗史にも仏像が製作された1330年以降に倭寇が瑞山地域に侵入した記録があり、略奪の根拠とみることができる」とし、「歴史的・宗教的価値を考慮すると仏像を浮石寺に引き渡す義務がある」と結論づけた。

一方、韓国検察は即日控訴し、併せて「金銅観音菩薩坐像仮執行引き渡し強制執行停止申請」を提出した。検察は浮石寺に返還すると毀損が進む可能性があり、また、高裁や最高裁で判決が覆されたとき、仏像の回収が困難になると考えた。

海神神社に返還された「銅造如来立像」は毀損していて、外交摩擦を危惧した日本側は、窃盗団の移送の過程で毀損したという韓国側の弁明を受け入れている。高裁は検察の主張を妥当と判断し、浮石寺への引き渡しを留保した。

大田高裁は18年6月に開かれた控訴審で和解案を提示している。仏像を日本に返して複製品を作るという案である。「千年万年が過ぎると新しい仏像も意味を持つし、韓国と日本に双子の仏像ができる」と提案したが、浮石寺が拒絶した。

大田高裁は浮石寺の所有権を認めた一審判決を取り消した。観音像が倭寇に略奪された可能性に言及しながらも「当時の浮石寺と現在の浮石寺が同一の宗教団体ということは立証できず、正規の手続きで譲り受けたという観音寺の主張も確認は難しいが、観音寺が法人化した1953年から2012年まで60年間占有しており20年の取得時効が成立する」と判決理由を説明した。

韓国検察は、一定期間、占有すると所有権が認められる取得時効を主張し、参考人として出廷した観音寺の田中節竜住職も仏像は16世紀に同寺を創建した僧侶が正当に韓国から持ち帰ったもので取得時効が成立していると主張していた。

韓国は盗品すら返さない国という風評を危惧する声

韓国仏教界は、浮石寺への引き渡しを求めるが、朝鮮日報は日本に返すべきだと主張する。同紙は社説で、浮石寺が略奪されたと主張するなら国際法が定める略奪文化財の手続きを行うべきだと論じている。正論と言えるだろう。韓国文化財庁も略奪された文化財は戻すのが原則だが、もし倭寇が略奪したことが確認されたとしても、日本に返還してから返してもらう過程を経なければならないと述べている。また、韓国は盗品すら返さない国という風評を危惧する声もある。

仏像を保管する国立文化財研究所は早急な解決を求めている。変色や錆など毀損が激しいが、盗難証拠品の保存処理は認められていない上、日本への返還が決まると韓国の修復が新たな摩擦を引き起こしかねない。日本への返還が急がれる。