ビートルズ、最後の新曲という“Now And Then”の音源が公開

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Photo: Jeremy Neech/Apple Corps Limited

ザ・ビートルズは最後の新曲という“Now And Then”の音源が公開されている。

“Now And Then”はジョン・レノンが録音したデモをポール・マッカートニーリンゴ・スターがAIの力を借りて復旧させて完成に至っている。

“Now And Then”の音源はこちらから。

ジョン・レノンは“Now And Then”のデモ音源をピアノとヴォーカルだけで70年代にニューヨークのダコタ・ハウスで制作しており、彼の死後にオノ・ヨーコはこの音源を、90年代の『アンソロジー』プロジェクトで完成して、リリースされた“Free As A Bird”や“Real Love”と共に1994年にポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターに渡している。

3人はジェフ・リンのプロデュースの下、新しいパートをレコーディングして“Now And Then”のラフ・ミックスを完成させたが、ジョン・レノンのヴォーカルとピアノを分離できず、クリアなミックスができないという「技術的な限界」が残ることとなった。

2021年になってピーター・ジャクソンはドキュメンタリー『ゲット・バック』でウィングナット・フィルムスのMALというオーディオ・テクノロジーを採用しており、これはモノの音源から楽器とヴォーカル、ホーンや個々人の声を分離させられるもので、2022年の『リボルバー』のリミックスでも採用されている。その後、この技術はジョン・レノンのヴォーカルとピアノをクリアにするために“Now And Then”のデモ音源にも使われることになった。

音源ではジョージ・ハリスンが1995年にレコーディングしたアコースティック/エレクトリックのギター・パート、リンゴ・スターによる新たなドラムとバッキング・ヴォーカルの音源、ポールによる新たなベースとバッキング・ヴォーカルの音源が使われており、ジョージ・ハリスン風のスライド・ギターとジョン・レノンの作曲を下にしたピアノも加えられている。

ジャイルズ・マーティン、ポール&ベン・フォスターがストリングスのアレンジを監修し、ポール・マッカートニーとジャイルズ・マーティンは“Here, There And Everywhere”、“Eleanor Rigby”、“Because”のバッキング・ヴォーカルを追加している。プロデュースはポール・マッカートニーとジャイルズ・マーティンが務め、ミックスはスパイク・ステントが担当している。

11月10日には赤盤と青盤のエクスパンデッド・エディションがリリースされることも決定している。

ビートルズ“最後の新曲”発売「ナウ・アンド・ゼン」AIを活用

1960年代に世界を席けんしたイギリスのロックバンド「ザ・ビートルズ」の新曲が発表されました。メンバーだったジョン・レノンさんが生前にテープに残した曲の音源に、AIを活用するなどして完成させた“最後の新曲”だということで、3日発売されたレコードを多くのファンが買い求めています。

「ザ・ビートルズ」は1960年代に世界を席けんしたイギリスの4人組のロックバンドで、1962年にデビューしてから解散するまでの8年の間に数々の名曲を発表し、今も世界の音楽シーンに絶大な影響を与えています。
レコード会社によりますと、今回の新曲は1980年に凶弾に倒れてこの世を去ったメンバーのジョン・レノンさんが、亡くなる数年前にテープに残していた曲「ナウ・アンド・ゼン」だということです。
テープの音源はジョン・レノンさんのピアノの弾き語りで、雑音などが多く混ざっていましたが、楽器の音や歌声を別の音源から学ばせたAIを使って、ピアノの伴奏や雑音を取り除いて、ボーカルだけを取り出したということです。
そのうえで、メンバーのポール・マッカートニーさんとリンゴ・スターさんが新たに演奏を加えるなどして、今回、曲を完成させたということです。
完成した曲はバラード調のラブソングで、27年ぶりに発表されるバンドの“最後の新曲”だとアナウンスされていて、日本時間の2日夜11時からインターネットでの配信が始まりました。

国内のファンたちは

国内では3日からレコードの販売も始まり、東京 渋谷の「タワーレコード渋谷店」の6階の売り場には特設スペースが設けられ、3日朝、入荷したばかりのレコードが陳列されました。
フロアには「ナウ・アンド・ゼン」などのザ・ビートルズの曲が流れる中、午前11時に開店すると、ファンたちが次々に訪れてレコードを買い求めていました。
購入した70代の男性は「60年来のファンで、ザ・ビートルズはもはや体の一部のように感じています。レコードはどうしてもほしかったので買えてよかったです」と話していました。
また、40代の女性は「配信ではあえて聞かずに、我慢して買いに来ました。家族全員がザ・ビートルズのファンで、このあと実家に帰って一緒にこのレコードを聴くので楽しみです」と話していました。
タワーレコード渋谷店のレコード売り場のフロア責任者の武田晃さんは「若い方から年配の方まで買っていただいていて、ザ・ビートルズは改めて別格だと感じます。これを機会にさらにファンが増えることを期待しています」と話していました。

リバプールではお披露目のイベントも

2日、イギリス中部のリバプールにある「ビートルズ博物館」では特設の会場が設けられ、往年のファンたちおよそ70人が集まってお披露目のイベントが開かれました。
イベントでは世界で同時に曲が公開される時間に合わせてカウントダウンを行い、スピーカーから音楽が流れ始めると、中にはそっと涙を拭う人の姿も見られました。
ファン歴が50年だという女性は「本当にすてきで感慨深い。悲しい曲だがとてもよい曲で、AIを使うというのはとても賢いやり方だと思う。生身のジョン・レノンがいるように感じた」と話していました。
ビートルズ博物館のオーナーのローグ・ベストさんは「ビートルズが何かを発表するとは誰も思っていなかった。曲からは本物のジョン・レノンがいるように感じた。とてもすばらしかった」と話していました。