処理水放出に中国が猛批判 米メディア「中国の言い分は偽善の極み」

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福島第1原発

国際原子力機関(IAEA)の安全基準に合致しているとの結論を受け、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出が先週始まった。これに中国政府は「核汚染水の海洋放出」とレッテルを貼り、日本の水産物輸入を全面的に停止した。そんな中国に対し、米ニュースメディアは「民主的な法治国家の環境基準より中国共産党を信用するのは愚か者だけ」と一刀両断にした。

日本の環境省は27日、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出が開始された翌25日朝に採取した約40キロ以内の11地点の海水を分析した結果、放射性物質トリチウムの濃度は、全ての地点で検出できる下限値を下回ったとし、「人や環境への影響はない」と発表した。

11か所での測定結果は、いずれも検出下限値(1リットル当たり7~8ベクレル)未満で、うち3か所ではセシウム137などの放射性物質についても分析したが、全て検出限界値を下回った。同省は当面の間、毎週分析を実施していく予定だ。

西村明宏環境相は「風評を生じさせないため、モニタリングを徹底していく」とのコメントを発表。福島県も27日、原発から約5キロ以内の9か所で25日に採取した海水を分析した結果、放射性物質トリチウムの濃度は検出できる下限値より低かったと発表した。9か所での測定結果は1リットル当たり3.7~4.1ベクレル未満だった。

国際原子力機関(IAEA)も独自に分析した結果、放出の基準を大きく下回っていることを確認。グロッシ事務局長は25日、「IAEAが公表したデータは世界の人々の安心にもつながっている」と強調した。IAEAは7月の包括報告書で、福島第1の処理水海洋放出について、「国際安全基準に合致している」と結論付けている。

一方、中国外務省の汪文斌報道官は海洋放出が始まった24日、「日本政府は国際社会の強烈な疑問と反対を顧みず、一方的に核汚染水の海洋放出を強行した。中国はこれに断固として反対と強烈な非難を表明する」と明言。日本からの水産物を全面禁輸とし、25日には、国家市場監督管理総局が食品業界の経営者に対し、日本の水産物の加工や調理、販売を禁じるとの追加措置を発表した。

さらに汪報道官は、日本の海洋放出計画は「国際社会から強い批判と反対を受けている」と主張し、「日本は生態系の破壊者となり、海洋を汚染する者となった」と非難した。

これに米保守系ニュースメディア「ワシントン・エグザミナー」が反応。「民主的な法治国家の環境基準よりも中国共産党の環境基準を信頼するのは愚か者だけだ」と一蹴した。

海洋放出が始まった福島第1のトリチウムの年間排出量は、事故前と同じ22兆ベクレル未満を予定。処理水の濃度を国の規制基準の40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の7分の1に希釈して海洋放出し、その後は海水と混じり、さらに薄まっていく。

これらの数値は他国と比較してもかなり低濃度だ。経済産業省のデータによると、中国・浙江省嘉興市の秦山第3原発の年間排出量は約143兆ベクレルで、福島第1の6.5倍、広東省陽江市の陽江原発は約112兆ベクレルで5倍、遼寧省大連市の紅沿河原発は約90兆ベクレルで4倍。韓国でも月城原発が3.2倍、古里原発が2.2倍となっている。

また欧米では、フランスのラ・アーグ再処理施設が454.5倍、カナダのブルースA、B原発は54倍、英国のヘイシャム2原発は14.7倍とまさにけた違いだ。

海洋放出をめぐる中国の日本に対する攻撃的な主張について、ワシントン・エグザミナーは「環境への懸念が動機ではなく、米国の太平洋の主要同盟国を弱体化させるために、この問題を利用できるという中国政府の判断」と分析。「中国が環境を破壊する行為について文句を言うのは偽善の極み」と言い切った。

結局のところ、大漁船団を組んで世界の海を荒らしているのは中国だと同オンラインメディアは指摘する。「これらの漁船団は、西アフリカ、太平洋、ラテンアメリカの脆弱な漁業資源を壊滅させ、すでに疲弊している地元の漁業を壊滅させている。中国は当然、これを否定している。だが、漁船団はトランスポンダ(位置情報を知らせる通信機器)を切り、他国の排他的経済水域に侵入したり、ガラパゴス諸島などの生態保護区を略奪している」と伝えた。

中国の環境破壊の暴走に関して言えば、これは氷山の一角にすぎないという。

中国は毎年数千万立方トンのプラスチックを川に廃棄し、海を汚染している。また、自らの利己的な利益のため、タイやラオスなど下流域に位置する南の隣国を犠牲にして、インドシナ半島を流れるメコン川を堰き止めてきた。

同メディアは、中国は世界最大の炭素排出汚染国であり、汚染国2位の米国の2倍の炭素ガスを大気中に放出し、「中国政府は漁船団について嘘をついているのと同じように、気候変動政策についても嘘をついている」とした。

「習近平(国家主席)は、気候変動が最優先事項だと主張したとしても、実際に中国は何百もの汚染源となる石炭火力発電所を新たに建設し、西側諸国から他の問題で譲歩を引き出すためのテコとして〝気候変動〟という言葉を使っているだけだ」と非難した。

ワシントン・エグザミナーは、「結局、日本の福島での計画は環境に優しいものとして信頼できるということだ。中国の環境実績を考慮すると、その苦情は軽蔑以外の何物でもない。実際、世界は環境問題に関して中国政府が主張していることの逆が真実であると考えるべきだ」と締めくくった。

TNL JP編集部