就職氷河期世代の暗黒「年金すらもらえない」老後破産の現実味

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長らく不況に苦しめられてきた日本社会。アベノミクスによる景気回復の恩恵をまったく感じられないままコロナ禍を経て、厳しい生活を強いられ続けている人々がいます。

就職氷河期世代、39万人が「正規で働きたいのに…」

厚生労働省HP『就職氷河期世代活躍支援プラン』によると、「就職氷河期世代」とは、1990年代から2000年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代のことを指します。

1980年代まで、日本は好景気でした。しかし1990年代に入って間もなく、株価・地価が暴落し、バブル崩壊。企業は人件費の節約・削減のため、一気にその門戸を閉めます。何百社と面接を受けてもなお採用されず、非正規雇用を余儀なくされた若者が相次いだのです。

非正規雇用者が増えた過程について、厚生労働省『労働白書』には次のように記されています。

“1987〜93年の雇用拡大期の状況をみると、大企業ほど雇用増加率が高まり、特に、正規雇用の増加寄与が大きかった。この時期には、大企業による同時一斉的な新規学卒採用の増加がみられ、中小企業の採用活動に支障を与えた可能性もあり、また、この過程で、中小企業における人材確保手段として非正規雇用が定着した面があったと思われる。

バブル崩壊後は、1993年以降、大企業で入職抑制がなされ、正規雇用は減少寄与を示したが、1993〜97年の間は、1〜29人規模、30〜499人規模では正規雇用者の増加がみられた。しかし、1997年以降は全ての企業規模で正規雇用者は減少し、大企業ほどその減少寄与は大きかった。雇用は非正規雇用で増加し、非正規雇用比率の上昇も大企業を中心に高まることとなった。”

現在では都合に合わせて「あえて非正規」の選択肢をとる方も多くいます。しかし内閣官房 就職氷河期世代支援推進室の資料『就職氷河期世代の就業等の動向』によると、2022年時点で「不本意非正規雇用労働者」は39万人いるということです。

■「日々の生活が不安」…追い打ちをかける「老後破綻の現実味」

非正規雇用かつ、何らかの理由で短時間労働だったり、勤務先の雇用条件が整っていなかったりする場合、就労していても厚生年金に加入できないことがあります。

就職氷河期世代の年金問題は、正規社員になれず、厚生年金に加入していなかった期間が長いことだけに留まりません。当時、「年金制度は破綻している。どうせ自分たちの時代にはもらえないのだから、払うだけ損だ」という考えが若いフリーターを中心に流行、実際に国民年金を支払っていなかった層も一定数いたのです。

厚生労働省年金局が発表した『令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、年金の平均受給状況は下記のとおりです。

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●令和3年度末における厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給する老齢基礎年金の額を含めて、老齢年金が14万6千円、通算老齢年金が6万3千円となっている。

●国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、令和3年度末現在で5万6千円、令和3年度新規裁定者で5万4千円となっている。

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年金受給額は、現役時代に年金保険料を「しっかり払っていたかどうか」に直結します。様々な原因・理由があれど、指定された金額を納めていないまま老後を迎えると、老後破産をはじめ、かなり厳しい生活を余儀なくされることは間違いありません。

労働年齢の「延長」は救済となるか

支える側が「支えられる側」になる未来。経済産業省は「老後も働く」という提案を以って、その構図を変えようとしています。

“高齢者が支え手になれば、無理なく支えられる社会へ
65歳以上を「支えられる側」とすると、2017年に現役世代2.1人で1人の高齢者を支えることに。2065年には1.3人で1人の高齢者を支えることに。

75歳以上を「支えられる側」とすると、2017年に現役世代5.1人で1人の高齢者を支えることに。2065年であっても、2.4人で1人を支えることが可能。”経済産業省『2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について』(平成30年)

実際、高年齢者雇用安定法の改正によって、65歳から70歳までの就業機会を確保するための努力義務が新設されました。とはいえ実情を見れば、「嘱託社員になって給与半減」「そもそも会社が再雇用に積極的ではない」という声も聞かれます。

国が働き続けることを推進している一方で、「働きたくても働けない」世代がいる現実。大きな歪みへの対応が求められています。