「食料」「水道」「ガス」のヤバすぎるインフレ率…日本人は我慢の限界だ

「子どもに身につけさせたい性質」調査

日本人は忍耐強いと言われるが、これは国際比較でも確認できる。例えば世界数十ヵ国の大学や研究機関などが共同で実施する「世界価値観調査」(’20年9月時点集計)では、「子どもに身につけさせたい性質」のうち「決断力・忍耐力」の項目は、77ヵ国中で日本が2位となっている。そして実際、学校教育や家での躾を通して、日本人は強い忍耐力を獲得している。  

だが、筆者はインフレ問題を見ていると、この忍耐力がいつまで継続できるか心配になる。アメリカほどではないものの、円安や資源高の影響で日本もそれなりの水準で物価上昇が起きているのだ。

1月に総務省が公表した消費者物価指数では、’22年12月の総合指数は前年同月比4%の伸びとなった。さらに、天候に左右されて振れの大きい野菜や鮮魚、果物を除いた「生鮮食品を除く総合指数」も16ヵ月連続で上昇しており、前年同月比4%の高い伸びとなっている。ここまで大幅に増加したのは、第2次石油危機の影響で物価が急騰した’81年12月の4%増以来である。

しかも、テレビや新聞等の報道では触れないケースが多いが、消費者物価指数を「モノ(財)全体」と「サービス全体」で区分すると、モノ(財)全体のインフレ圧力が特に高いことが分かる。’22年12月の時点で、医療・教育といった「サービス全体」のインフレ率は前年同月比0.8%しか上昇していないが、食料工業製品や電気・ガスといった「モノ(財)全体」のインフレ率は前年同月比7.1%まで上昇している。

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医療や教育は診療報酬や大学の授業料などを政府が統制しているため、インフレ率が抑制できている。しかしモノについては、インフレの歯止めが利かなくなっている。

モノの物価上昇幅がより大きいのは、東京都区部だ。1月10日に総務省が発表した東京都区部における’22年12月の総合指数は前年同月比4%増。これをサービスとモノに分けると、「サービス全体」のインフレ率は前年同月比0.9%に過ぎないが、「モノ(財)全体」は前年同月比7.9%となった。電気・都市ガス・水道に至っては、前年同月比で25.5%の伸びだ。

このような状況のなか、賃金も目減りしている。1月24日に厚生労働省が公表した「毎月勤労統計調査」(’22年11月分、確報値)によると、物価変動の影響を取り除いた「実質賃金」は前年同月比マイナス2.5%で8ヵ月連続の減少だった。実際の体感は数字以上で、生活が相当苦しくなっていると感じる家計も多いはずだ。  

こうした現実を反映してか、1月に内閣府の経済社会総合研究所が公表した「消費者マインドアンケート」では、「半年後の暮らし向き」に対する質問につき、「やや悪くなる」と「悪くなる」の合計が約6割も占めた。「1年後の物価上昇」に対する質問でも「上昇する」「やや上昇する」が合計で9割を超えた。

「インフレは一時的で、今年の後半には沈静化する」と予測するエコノミストもいるが、その通りになる保証はない。日本人は幼少期から「忍耐力」を鍛えられており、不景気も節約と工夫で乗り切ってきた。しかし、ここまで急激かつ大幅なインフレを前に、我慢も限界に達しようとしている。

「週刊現代」2023年2月4日号