「長く見られたら勝ち!」はもう古い?マッキンゼーが提唱する「アテンションの質」がメディアを変える!

「長く見られたら勝ち!」はもう古い?マッキンゼーが提唱する「アテンションの質」がメディアを変える!

「アテンション関数」で消費者の価値ある時間を可視化

マッキンゼーは、世界の消費者7,000人(うち米国3,000人)を対象とした調査を基に、消費者の「価値ある時間」を測る新しい指標「アテンション関数」を構築しました。この関数は、メディア企業やコンテンツ制作者、広告主が、限られた消費者の関心をどこで、どのように獲得し、収益につなげるべきかを教えてくれます。

このインサイトは、Kabir Ahuja、Marc Brodherson、Jordan Bank、Jamie Vickers氏による共著です。日本語版の監訳は、以下のメンバーが担当しています。

  • 梅村太朗氏(シニアパートナー、東京オフィス): https://www.mckinsey.com/jp/our-people/taro-umemura

  • 鶴田雄大氏(アソシエイトパートナー、東京オフィス)

  • Steve Park氏(アソシエイトパートナー、東京オフィス)

  • 乙部一郎氏(シニアクライアントアドバイザー、東京オフィス)

詳細はこちらから確認できます。
消費者のアテンションを可視化する『アテンション関数』:消費者のアテンション獲得競争に勝つために

デジタルメディアの利用拡大と収益のギャップ

2024年の米国では、主要20メディア領域で年間約1.5兆時間もの消費があり、約5,700億ドルの売上高と約1,300億ドルの利益が生み出されています。しかし、消費者の時間がどんどんデジタルメディアへ移行しているのに、収益や利益は同じスピードで動いていないそう。ソーシャルメディアや動画配信の利用は増えている一方で、昔ながらのレガシーメディアが、消費時間に対して比較的高い収益を維持しているという興味深い結果が出ています。

図表1 新興メディアの利用は拡大しているが、収益性ではレガシーメディアに及ばない

同じ1時間でも価値は最大650倍!?

メディア消費における「1時間」の価値って、実はメディアによって全然違うんです。マッキンゼーの分析によると、ライブスポーツの1時間あたりの収入は32.54ドル、遊園地は24.96ドル、ライブ音楽は17.18ドルと高水準です。ところが、動画配信は0.32ドル、ソーシャルメディアは0.25ドル、ポッドキャストは0.05ドルと、大きく下がります。ライブスポーツとポッドキャストでは、なんと1時間あたりの収入に約650倍もの差があるんですよ!

この大きな差は、単に「どれだけ長く利用されたか」だけでは説明できません。どのメディアを、どんな集中度で、何のために利用したかによって、同じ1時間が生み出す経済的な価値が大きく変わるんですね。

図表2 収益化の構造と水準はメディアごとに大きく異なる

収益化の「見えない3分の1」を解き明かす「アテンション関数」

これまでのメディア収益化の分析は、消費者価値や広告市場、プラットフォームの成熟度といった商業的な要因(コマーシャル指数:CQ)が中心でした。しかし、マッキンゼーの分析では、これだけでは収益化のばらつきの約3分の2しか説明できないことが判明したんです。

残りの約3分の1を左右するのが、消費者の「アテンションの質」です。マッキンゼーは、コンテンツにどれだけ集中しているかを示す「集中度」と、なぜそのコンテンツを利用するのかという「消費目的」を「アテンション指数(AQ)」として数値化しました。このCQとAQを組み合わせた「アテンション関数」を使うと、非ライブメディアの収益化のばらつきの約80%を説明できるようになったそうです。

図表 4 アテンション関数では、アテンションの質を考慮することで、メディアの収益化の実態をより正確に把握することが可能

「たくさん見る人」と「価値を生む人」は違う!

この調査では、消費者のメディアへの集中度が平均10%上がると、メディアへの支出が17%増え、広告がきっかけで商品を買う頻度も20%高まる傾向があることがわかりました。さらに、集中度が高い上位25%の消費者は、下位25%の消費者に比べて約2倍もメディアにお金を使っているんです。

面白いことに、「たくさんメディアを利用する人」と「たくさんお金を支払う人」は、必ずしも同じではないんです。メディア支出額の上位10%の消費者が総支出の約50%を占める一方で、消費時間上位10%の「スーパーユーザー」が占める支出は、全体の約22%にとどまります。消費時間が多い「スーパーユーザー」の中でも、支出額でも上位10%に入る「スーパースペンダー」は、約3分の1しかいないんです。

図表 8 消費量の多さと支出の多さは必ずしも一致しない。アテンションは、そのギャップを埋める助けとなる

年齢や所得だけじゃない!7つの「アテンション・セグメント」

マッキンゼーは、消費者を年齢や所得、利用時間だけで分けるのではなく、メディアに対する価値観やアテンションの質に基づいて7つのセグメントに分類しました。その中でも、「コンテンツ愛好家」(13%)、「インタラクティビティ愛好家」(16%)、「コミュニティトレンドセッター」(10%)の3つの層は、アテンションの価値も商業的な価値も高く、全体の約4割を占めています。

特に「コンテンツ愛好家」は、平均的な消費者と比べてメディアへの支出が2.4倍、消費量が1.7倍も多いんです。さらに、広告をきっかけとした購買頻度は、最も大きなセグメントである「レガシーメディア支持層」のなんと12倍にもなるそう。これは、広告への好感度や単なる利用時間だけでは見つけにくい、本当に価値の高い消費者を特定できる可能性を示していますね。

図表 6 アテンションに基づく消費者セグメント

日本のメディア・広告・コンテンツ企業へのヒント

今回の分析は主に米国消費者を対象としたものですが、コンテンツが増え続ける中で、限られた消費者の時間を奪い合う状況は、日本のメディアや広告、エンターテインメント、ブランド企業にとっても他人事ではありません。

これからは、視聴時間やリーチ、MAU(月間アクティブユーザー数)、インプレッションといった「量」の指標だけでなく、消費者がどのくらい集中しているか、どんな目的でコンテンツに触れているかという「質」を捉えることが重要になります。そして、その「質」をコンテンツへの投資、広告の配分、顧客獲得、レコメンド機能、価格設定、サブスクリプション設計などに活かしていくことが求められるでしょう。

メディア企業やコンテンツ制作者にとっては、単に視聴時間を増やすだけでなく、「好きだから観る」「学ぶために観る」「みんなとつながるために観る」といった、価値の高い消費目的をどうやって生み出すかが、LTV(顧客生涯価値)や収益アップのカギになります。広告主やブランド企業も、広告の大きさに加えて、その広告が掲載される文脈と、消費者の集中度や利用目的が合っているかを見極めることで、メディア投資の効果が大きく変わってくるかもしれませんね。

人口統計だけでは見つけにくい「高アテンション・高商業価値」の顧客層を見つけられれば、広告・コンテンツ・コマースを横断した、新しい顧客戦略につながる可能性も秘めています。メディア競争の焦点は、「どれだけ長く画面を独占できたか」から、「どれだけ価値ある時間を獲得できたか」へと、着実にシフトしているようです。

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