死亡後に口座凍結されるタイミング 解除方法や必要書類、注意点を解説

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口座凍結を解除する方法や必要書類、口座凍結に関する注意点などを認識しておきましょう

預金口座の名義人が死亡したことを銀行に連絡すると、その預金口座は凍結されます。口座凍結を解除するには銀行所定の相続手続きが必要となり、手続きが完了するまで2~3週間を要します。相続による口座凍結を解除する方法や必要書類、口座凍結に関する注意点などを司法書士が解説します。

1. 口座が凍結されるのは銀行が死亡の事実を知ったとき

銀行は口座の名義人が亡くなったことを知ると、被相続人(以下「亡くなった人」)の預金口座を凍結します。

役所に死亡届を提出したら自動的に預金口座が凍結されるわけではなく、親族が銀行に連絡して口座の名義人が死亡したことを伝えると、そのときから口座が凍結され取引停止となります。銀行担当者が新聞の訃報欄を見たり葬儀が行われたことを知ったりしたときには、銀行が自ら親族に確認をとって口座を凍結することもあるようです。

なお、銀行間で口座名義人の死亡に関する情報が共有されることはないので、A銀行に死亡の連絡をして口座が凍結されても、B銀行の口座は凍結されません。一方、A銀行の甲支店と乙支店に口座をもっていた場合には、甲支店に死亡の連絡をすると乙支店の口座も凍結されます。

2. 預金口座が凍結されるとどうなる?

2-1. 入出金ができなくなる

銀行が口座名義人の死亡を知り預金口座が凍結されると、その口座は取引停止となり、原則としてすべての入出金がストップします。預金の引き出しはもちろんのこと、預け入れもできなくなります。葬儀費用や治療費、入院費の精算などまとまったお金が必要でも、亡くなった人の口座から引き出すことはできません。

2-2. 口座引き落としや振り込みによる受取も不可能に

預金口座が凍結すると、公共料金やクレジットカードの支払いについて口座からの引き落としができなくなります。そのまま放置すると延滞料(遅延損害金)が発生するだけでなく、電気、ガス、水道などライフラインを止められてしまうので注意が必要です。また、株などの配当金や不動産を貸している場合の賃料など振り込みによる受け取りもできなくなります。

3. 口座凍結の解除方法

預金口座の凍結を解除するためには、銀行で下記2つのいずれかの相続手続きを行う必要があります。

  • 亡くなった人が使っていた口座の名義を変更して引き継ぐ
  • 口座を解約して預金の払戻しを受ける

なお、一部の銀行や金融商品によっては、「口座を解約して預金の払戻しを受ける」の方法しか認められない場合もあります。具体的な方法は各銀行に問い合わせてみてください。

預金口座の凍結から解除までの流れ預金口座の凍結から解除までの流れを図解。銀行所定の相続届と必要書類を提出することで、凍結を解除することができます

3-1. 銀行への連絡

亡くなった人が利用していた銀行の支店窓口か相続事務センターに電話をして、口座の名義人が亡くなったことを伝えます。この時点で口座は凍結されますので注意してください。

手続き案内のために来店を要求されることもありますし、そのまま電話で必要書類を案内してくれることもあります。手続き案内の資料一式を送ってくれる銀行もありますが、手続きに不安がある場合は、窓口で直接案内を受けたほうが良いかもしれません。

3-2. 必要書類の準備と提出

銀行から指示された必要書類がすべて準備できたら、銀行に連絡して予約をしたうえで窓口に提出します。予約なしに持って行っても受け付けてもらえないこともありますので必ず予約するようにしましょう。

預金口座の相続手続きで一般的に必要となる書類は次のとおりです。なお、印鑑証明書や法定相続情報一覧図など公的書類の有効期限については、3カ月または6カ月としている銀行が多いです。有効期限については必ず確認することをお勧めします。

相続人が1人の場合
①相続届(各銀行ごとに雛形が異なる)
②亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本
③相続人の戸籍謄本
④相続人の印鑑証明書
※②③は法定相続情報一覧図で代用可

相続人が複数の場合(遺産分割協議の場合)
①相続届(各銀行ごとに雛形が異なる)
②亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本
③相続人全員の戸籍謄本
④相続人全員の印鑑証明書
⑤遺産分割協議書
※②③は法定相続情報一覧図で代用可 

遺言がある場合
①相続届(各銀行ごとに雛形が異なる)
②亡くなった人の死亡の記載がある戸籍謄本
③口座を引き継ぐ相続人の戸籍謄本
④口座を引き継ぐ相続人の印鑑証明書
⑤遺言書(自筆証書遺言の場合には検認が必要)

※上記は一般的な必要書類です。銀行や事例により上記以外の書類を求められることもあります。

3-3. 口座凍結解除までの日数は2~3週間

必要書類をすべて提出して2~3週間程度で手続きが完了します。亡くなった人の口座を引き継ぐ名義変更であれば、名義が変更された通帳を受け取ります。解約して預金の払戻しを受ける場合であれば、相続人が指定した銀行口座に払戻し金が振り込まれて、亡くなった人名義の解約済みとなった通帳が郵送されてきます。

3-4. 口座凍結解除にかかる費用

口座凍結を解除する際、銀行に支払う手数料はありません。必要書類の取得費用は、1通あたり戸籍謄本450円、改製原戸籍(除籍謄本)750円、印鑑証明書300~400円程度ですので、一般的には数千円で済むでしょう。

なお、弁護士や司法書士などの専門家に手続きを代行してもらう場合には、別途報酬がかかります。司法書士であれば、3~5万円ほどが相場となっていますが、預貯金以外の相続財産すべての手続きを代行する遺産承継業務(遺産整理業務)の場合には財産金額によって報酬額が変わりますので、依頼する場合には一度見積りを出してもらうと良いでしょう。

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4. 口座凍結後でも預金の一部が引き出せる「仮払い制度」

上記のとおり凍結解除には、早くても2週間程度はかかります。また、相続人が複数人いて遺言がない場合には相続人全員の協力が必要です。万が一、相続人の中に手続きに協力しない人や行方不明者がいる場合には凍結解除までにかなりの時間を要することもあります。そうなると、葬儀費用の支払いや亡くなった人の借入金の返済が滞ったり、残された相続人の生活が困窮したりすることもあるでしょう。

そこで、法律が改正されて令和元年7月1日から「仮払い制度」が創設されました。この制度を使えば、各相続人が単独で凍結口座から預金の払戻しを受けることができます。ただし、払戻しを受けられる金額には次のとおり制限があります。

「亡くなった人の死亡時の預金残高×3分の1×払戻しを受ける相続人の法定相続分」(ただし、同一金融機関からの払戻しは150万円が上限)

仮払い制度に基づき銀行に払戻しを請求する場合には、下記の書類を提出する必要があります。

①銀行所定の請求書(申請書)
②亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本
③相続人全員の戸籍謄本
④払戻しを受ける相続人の印鑑証明書

新しい制度ということもあり、銀行ごとに多少異なる取り扱いもあるようなので、詳しくは各銀行に問い合わせたほうが良いでしょう。

【関連】相続で司法書士にできること 費用や依頼すべきケースを解説

5. 口座が凍結される前にすべきこと

前述のとおり口座の名義人が亡くなったことを銀行に連絡すると、その時点で口座は凍結されてしまいます。亡くなってから何日以内に連絡しなければならないというルールはありませんので、慌てずにしっかりと事前準備をしてから銀行に連絡することをお勧めします。

5-1. 通帳の記帳を行う

口座が凍結されるとATMで残高照会を行うことも通帳記入することもできなくなります。記帳をしてみないとその口座の残高がいくらで、どのような取引に利用されていたのか確認することができません。銀行へ連絡する前に必ず記帳して、現在の預金残高、定期的な入出金がないか、公共料金等の引き落とし口座になっていないかを確認しましょう。

5-2. 公共料金等の引き落とし口座を変更する

電気、ガス、水道、電話など公共料金の引き落とし口座になっている場合には、引き落とし時期を確認するとともに、名義変更や請求先の変更を行っておくと良いでしょう。また、クレジットカードの引き落とし口座になっている場合には、カードの最終利用分の引き落としがされてから銀行に連絡するほうが余計な手間が省けます。

6. 凍結前の引き出しにはリスクもある

キャッシュカードがあり、相続人が暗証番号を知っていれば、亡くなった人の口座からATMで預金を引き出すことは可能です。預金口座が凍結される前に相続人が複数回に分けて引き出しを行うケースはしばしば見られます。しかし、凍結前の引き出しには「相続放棄ができなくなる」「相続人間のトラブルの原因になる」といったリスクがあります。

6-1. 相続放棄ができなくなる

相続はプラス財産だけでなくマイナス財産も承継します。そこで、相続の方法として、プラスもマイナスも一切の財産を承継する「単純承認」、プラスがある場合に限り承継する「限定承認」、マイナス財産が多かったり相続手続きに関わりたくなかったりする場合に行われる「相続放棄」の3種類があります。預金を引き出すことは単純承認とみなされて、後にマイナス財産が発覚しても限定承認や相続放棄が認められない可能性があります。

6-2. 相続人間のトラブルの原因になる

亡くなった人の死亡後に一部の相続人が預金を引き出した場合、その使い方によってはほかの相続人とのトラブルに発展する可能性があります。葬儀費用など明確な使途があり、領収書などの証拠書類があればいいですが、使途不明金があると相続人間で不信感が生まれる原因となります。

亡くなった人の死亡後に引き出された預金も相続財産ですから、当然に遺産分割協議の対象になりますし、相続税が発生する場合には申告すべき財産に含まれることになります。後々のトラブルを防止するためにも死亡後の預金引き出しはできるだけ行わないほうが良いでしょう。どうしても引き出す必要がある場合には、使途を明確にすること、相続人全員の了承を得ておくことが重要です。

7. まとめ

口座名義人が死亡したことを知った銀行はすぐに口座を凍結します。「とりあえず連絡だけと思って銀行に死亡したことを伝えたら、すぐに口座が凍結されて困ってしまった」という声を聞くことも少なくありません。

逆に、「凍結されると困るので慌てて引き出したことで相続人間でトラブルになってしまった」というケースもあります。預金口座の相続手続きは、手続きの流れを理解したうえでしっかりと順序立てて行うことが大切です。手続きに不安がある場合や口座が凍結されて困っている場合は司法書士などの専門家に相談してみましょう。

(記事は2023年5月1日時点の情報に基づいています)