人口減少により影響を受ける「葬祭」…僧侶の後継者不足で「廃寺」が急増する

激動の年は暮れゆき、新たな年を迎える。今こそ、日本の行方を左右する難題を見つめよう。そのうえで、過去の成功体験を捨て、発想を変えれば、うさぎのように軽やかに難局を跳び越えてゆける。

2023年の日本はいったいどうなるのだろうか? ジャーナリストに池上彰さんと河合雅司さんにお話を伺った。

出生数80万人割れの衝撃

池上 2023年が始まります。コロナ禍がようやく落ち着いてきたかと思ったところに、原油高や円安、物価高など生活に直結する問題が噴出してきました。加えて、岸田文雄総理は防衛費増額を表明し、「将来の国民のために、国債発行ではなく税で賄う」と、増税を言い出しました。でも実は、それ以上かもしれないという深刻な問題が横たわっていますね。

河合 はい。人口減少と少子高齢化です。’22年の出生数はついに80万人を割り、77万人ほどに留まる見込みです。年間100万人を割った’16年からわずか6年でここまで減るかと驚くばかりです。政治家や官僚は相変わらず「出生率を上げよ!」と叫んでいますが、出生率が上がっても出生数は減少し続けます。

池上 そもそも子どもを産む世代が減っているし、婚姻数も減っているからですね。今や、人口減少を受け入れた対策を考えるべき時期です。

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河合 年末年始にはよく「未来予測記事」が出ますが、当てにならないものも多い。しかし、人口動態に基づいた未来予測は大きく外れません。混迷を極める日本の未来は、人口減少問題を考えることで読めるのです。

池上 日本が縮みゆく過程で何が起きるのか―コロナ禍を経て、ライフスタイルは大きく変わりました。そこに人口減少を加えて考えれば、未来の日本の姿が見えるということですね。まず、企業や地域経済は大きく変化するでしょう。

河合 たとえば地方ではこれから、冠婚葬祭業界がダメージを受けるでしょう。とりわけ「葬祭」は影響が大きく、ここ数年でガラリと変わります。高齢化が進む日本は「多死社会」であるのに、葬儀に欠かせないお寺が「廃寺」化します。

池上 地方都市に行くと、朽ち果てているお寺を見かけることがあります。檀家がどんどんいなくなっているからですね。

コンパクト化する冠婚葬祭

河合 調べてみると、全国の6割もの寺院で檀家が減少しているのです。寺院の収入は檀家の護持費やお布施ですが、働き盛りの若者は都会に出ていき、寺を支えるのは年金暮らしの高齢者ばかり。僧侶の高齢化も顕著で、すでに2割が70代。正住職のいる寺院の3割に後継者がいません。

池上 墓じまいも増えています。都会に出た人たちが故郷の墓を守り切れないという理由で、都会の寺院に墓や納骨堂を移していますが、その際には墓石の処分が必要ですね。とある県に、処分する墓石を引き取っている寺があるのですが、敷地の斜面一面に墓石が積み重ねられていました。

河合 まさに「墓の墓場」ですね。葬儀は家族葬などコンパクト化がどんどん進んでいますが、やがては葬儀を行わず火葬場に直行する「直葬」が増える。「今の時代、直葬でも仕方ない」と考える人がすでに7割に上っているという調査結果もあります。親戚が一堂に会して自分を見送ってくれる時代ではなくなります。

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池上 結婚式もコンパクト化が顕著です。今は、結婚式を家族だけで行い、披露宴は開かない。代わりにインスタ映えするような景勝地で二人の写真を撮って、そのアルバムを親戚や友人に贈るそうです。ライトアップされた東京駅を通ると、その撮影現場に出くわしますが、アルバムをもらって嬉しいのかどうか……。

河合 冠婚葬祭が少なくなれば、仕出し、お花、引き出物などの関連業種も立ち行かなくなります。

池上 冠婚葬祭を見ただけでも、人口減少が日本社会をいかに変えてしまうかがわかります。次に、社会インフラについて予測してみましょう。

河合 インフラの崩壊はすでに始まっています。医療では、救急車や救急隊員の不足が深刻さを増し、救急車がすべて出払っていたので、消防車がとりあえず駆けつけたという例もありました。

池上 ご近所の人は「火事だ!」と思って驚いたでしょうね。

「週刊現代」2022年12月31日・2023年1月7日合併号より